特別講師:森石豊氏プロフィール

横浜国立大学卒。雑誌ライター、動画ディレクター、オウンドメディア編集長などを経て独立。SEOコンテンツを中心に記事制作を行うかたわら、複数のスタートアップ企業のサービス立ち上げに関わる。2023年7月に文書制作AIアシスタントサービス「Xaris(カリス)」をリリース。また「維嶋津」というペンネームでSF作家としても活動している。

「小説を書く」意味と、AI時代のストーリーテリング

AIを使って小説を書いてみよう

セミナーの初めに、森石氏は参加者へ「小説を書いた経験があるか」を質問。多くが「初めて」と答える中、「今日はAIを“壁打ち相手”にしながら創作を楽しみましょう」と呼びかけました。

近年、企業や自治体の広報でもAI活用が広がる中、森石さんは「AIで情報を整理して伝えるだけでなく、背景や想いを物語として届けるストーリーテリングの需要が増えている」と指摘。

「読者の心に長く残るメッセージを紡ぐ力は、これからますます必要になります」と強調しました。

さらに、AIを使って小説を書く方法にはいくつかのスタイルがあることを説明し、芥川賞作家・九段理恵氏がAIと対話しながら小説を執筆した事例や、詳細な指示で小説を全自動生成する方法など、多様なアプローチを紹介しました。

参考:九段理江に95%AIで小説書いてもらってみた。小説『影の雨』、プロンプト全文公開

AIでキャラクターにしゃべらせながら進める執筆法

AIを使って小説を書いてみよう

森石氏は、AIを使った小説の執筆方法として、「キャラクターにしゃべらせながら進める執筆法」を紹介。

1.まず世界観やキャラクター設定を作り込む

2.AIにキャラクターとして日記を書かせ、口調や性格を定着させる

3.その人物として物語を書かせ、必要に応じて人間が加筆・修正する

実演中「キャラが勝手にしゃべり出す感覚が楽しい」と森石さん。


この方法を活用した事例として、森石氏は自身が監修した「リプトンミルクティー恋AI(れんあい)小説」を紹介。

リプトン購入者から寄せられた65,000字の感想やエピソードを並び替えるための仕組みを構築し、物語のプロットやキャラクター設定、本文まで、ほぼ100%をAIで生成したと説明しました。

参考:“日本初※1”ファンの声×AIによる恋愛小説リプトン ミルクティー「恋AI(れんあい)小説」3月12日(火)より電子書籍サイトにて期間限定公開
(現在小説自体は閲覧できません)

AIライティングアシスタントXaris(カリス)小説モードの実演

セミナー画面

Xarisの実演では、森石氏が音声入力でキャラクター設定を読み上げ、即座にテキスト化される様子を実演。キャラクター設定がスピーディーに行われる様子を紹介してくださいました。

さらに、関西弁への変換やキャラクターの設定変更をデモンストレーション。キャラクター追加や新しいストーリー展開の挿入なども、Xarisへの指示で瞬時に反映される様子が共有されました。

短いあらすじを入力すると、Xarisが質問を返してくれ、それに執筆者が答えながら世界観を肉付けし、小説が生成されるプロセスをその場で確認することができました。澱みなくストーリーを紡ぐAIのスピードに驚きです!

「オリジナリティ」は違和感から生まれる

ストーリーテリング

坂本から「AI主導の小説執筆をするなかで、自分らしい表現を出すには?」と質問。

森石氏は、「まずはAIに書かせた文章を一度しっかり読んでみることを勧めます。すると必ず“ここは違う”“これはちょっと気に入らない”というポイントが出てくるはずで、それこそが自分の個性が表れる瞬間」だと言います。

「何もないところからオリジナリティを出すのは難しい。でも、AIの提案に“これじゃない”と感じる感覚は自然に湧く。その違和感をAIにぶつけ、修正を重ねることで、だんだん“自分が書いた”作品になっていきます」

森石氏は、このやりとりを繰り返すうちに、自分がどんな言葉で書きたいのかが明確になっていくと語ります。AIとの共同作業は、自分の作家性を発見する過程でもあるのです。

さらに物語作りのコツとして、「結末から逆算する」手法を紹介。「最後をどう終わらせたいかを先に決め、そこに向けて山場を設計することで、物語全体に一貫性が生まれる」とアドバイスしました。

参加者にはXarisで小説を書いてフィードバックをもらえるチャンスも!

今回のセミナー参加特典として、

特典①
セミナー開催までにXarisの無料アカウントを作成すると、通常は月額19,800円の「PROモード」を1か月間無料で利用可能。セミナー当日は、この「小説制作モード」を使用しました。

特典②
セミナー受講後、ご自身で執筆した小説に対して、森石氏から個別にフィードバックを受けられる機会も提供。希望者の中から抽選で3名までが対象となります。

参加者から、この機会にAIを使った小説執筆に挑戦してみたいという方もいらっしゃいました。

また、森石氏から10月に小説ハッカソン(短期間で集中的に小説を書き上げるイベント)「Novel Jam 2025」が開催予定との告知がありました。「AIと共作する作品を形にする絶好の機会になる」とのこと。

興味がある方はチェックしてみてください!

NovelJam 2025 開催のお知らせ | NovelJam

セミナー中の質疑応答

AIで小説を書くことに関する参加者の質問に森石氏が回答しました。

Q1:二次創作に使ってもいいのでしょうか?

Xarisを二次創作で使っている方もけっこういらっしゃいます。個人で楽しむ分には法律的にも著作権的にも問題ありませんし、発表したり商用利用したりしなければ大丈夫です。

ただ、今回もし創作にチャレンジいただけるなら、せっかくなので私は一次小説を読ませてもらいたいと思っています。好きな作品やキャラクターから発想を得ても、その魅力を抽象化すれば一次創作にも活かせます。

たとえば、

「普段は笑顔なのに真剣な瞬間だけ見せるキャラにぐっとくる」
「物語の序盤と終盤で同じセリフがまったく違う意味で響く」

など、シチュエーションや構造に注目して、自分だけの物語を作っていただければと思います。

Q2:AI小説の将来性は?

将棋の世界でAIがプロ棋士を破ったとき、若い世代がAIと対局を繰り返すことで実力を伸ばし、藤井聡太さんのような才能が登場しましたよね。

小説の世界でも同じようなことが起きると思っています。AIと一緒に、自分が書きたい・読みたい小説をとことん作り込んだ人たちが、将来これまでにない文章を書く書き手として登場するはずです。

それは小説家に限らず、ライターでも同じです。AIと楽しく遊んだ経験が、その人の書く力を大きく伸ばすことにつながると思うので、まずは気軽に試してみてほしいですね。

「AIと共に書く時代」の創作体験

AIと人

今回のセミナーは、AI時代における小説執筆の新しい形を具体的に体験できる場となりました。AIが生み出すアイデアと人間の感性を融合させることで、創作の可能性は大きく広がります。

特に印象的だったのは、森石さんの「AIで効率的に秒速で書くことには、これからますますニーズがなくなる。むしろ、自分らしく、ゆっくりでもいいから文章を書き、形に残すことの価値が高まっていく」という言葉です。

小説で「こんなストーリーを書きたい」、仕事で「要件に合わせて原稿を書きたい」――どんなライティングをする場合でも、その起点には必ず「人」がいます。AIは、その想いを形にする可能性を大きく広げてくれる存在です。

「AIに書かせる」のではなく、「AIと共に書く」。

まだその可能性が掴みきれず、不安を感じることもあるかもしれませんが、この生成AI時代黎明期に、小説の創作や仕事などにAIを積極的に使ってみることは、ライターとして新しい挑戦や貴重な体験につながると感じたセミナーでした。

この記事を書いたライター

執筆者

坂本 緑

旅行ガイドブックの編集・ライター、コピーライターを経て、フリーライターに。現在は、Webメディアの編集・記事執筆のほか、コピーライターとしてWeb・紙媒体問わず広告制作に携わる。一番好きなのは出会いがある取材とインタビュー。Mojiギル...

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