人の覚悟を紡いだ記事

人の覚悟を紡いだ記事

去年、私は山間の村でカフェを営む、若い女性のインタビューに行きました。そのお店は大人気で、遠方からもお客さんが集まるほど。彼女はカフェの他にも、空き家をリノベーションして宿泊施設を立ち上げるなど、実業家として活躍しています。

「小さな村を舞台に事業を展開する、キャリア志向の女性なのかな」そんな想像をしていたのですが、実際にお目にかかった彼女はとても穏やかな方でした。取材で明らかになったのですが、彼女が生まれ育った村で起業したのは、ご自身の利益のためでも、事業を拡大するためでもなかったのです。

その村は、住民の高齢化や若者の流出などの問題を抱えていました。このまま人口減少や産業の衰退が進むと、いずれは市町村合併により村が変わってしまう可能性があります。

カフェを開いたのは、村内外の人たちが集まる場所を作るため。

宿泊施設を立ち上げたのは、空き家問題を解決するため。

彼女が動き出したのは、生まれ育った村を守るためだったのです。

強く静かな口調と生き様に、私は圧倒されていました。地方創生や地域おこしとは違う、その土地で育った人ならではの、自らの手で村を守り続けるという尊い覚悟。彼女の想いを聞き、文章として紡いだ記事は、私のひそかな誇りです。

彼女はここに挙げた以外にも、村の問題を解決するためのさまざまな活動をしています。その種がどんなに美しい花を咲かせるのか、10年後、20年後にもう一度取材できたら幸せですね。

自信をくれたエンドクライアントの一言

自信をくれたエンドクライアントの一言

ある取材の際、思いがけずエンドクライアントが同席することになりました。共同取材ではなく、インタビュアーは私ひとり。同行の経緯は不明ですが、お断りするわけにはいきません。

取材当日、初めて顔を合わせたエンドクライアントの男性は、笑顔がやさしい方でした。その印象に少しだけ安堵したものの、私の緊張はほぼMAX。不安は加速度的に膨らんでいきます。

事前リサーチが足りないと思われるかな。

要点がずれてしまったらどうしよう。

幸い、インタビュイーはとても饒舌な方でした。ご返答を深堀りすると、思いもよらなかったエピソードや苦労話が次々に飛び出してきます。私はお話を伺うのが楽しくて、インタビューに没頭してしまいました。

「…さわきさん」

再び緊張が走ったのは、取材が終わった後、エンドクライアントに呼ばれたときです。

どうしよう、やっぱり至らない点が多かったのかな。

焦る私に、その人は思いもよらない言葉をかけてくださいました。

「良いお話をたくさん引き出しましたね。お見事です」

一瞬の驚きの後、じんわりと嬉しさがこみあげました。真正面から取り組んでいる仕事に対して「お見事」と言ってもらえたのですから。

それ以来、私はインタビューに小さな自信を持ち始めました。相変わらず緊張はしますが、以前よりは少しだけ、堂々としていられるようになったかもしれません。

取材ライターの仕事には価値がある

取材ライターの仕事には価値がある

一口に取材記事と言っても、その種類はさまざまです。誰かの人生や挑戦を描くドキュメンタリー、イベントの様子を伝えるルポタージュ…。システムの導入事例や新商品の開発秘話などは、マーケティングの意味合いも考えなければなりません。

取材はオフラインでインタビュイーを訪ねる場合や、Google MeetなどWeb会議ツールを使ってオンラインで行う場合もあります。私は相手の呼吸や背景を感じられるオフライン取材が好きです。一方で、オンライン取材は場所を問わず、日程調整もしやすいので便利ですね。

どの取材記事でも、根底に流れているのは「人の行動と想い」

自分のために、誰かのために、何かのために人が体と心を動かすとき、そこには必ず歴史が生まれます。未熟な私ですが、これまでのインタビューを通して「人に歴史あり」が座右の銘となりました

人には誰でも、泣いたり笑ったりしながら生きてきた道のりがあり、そこには確かな足跡が刻まれています。取材ライターの役割は、インタビュイーが語る歴史の一部を聞き、文章に紡いで発信すること。決して簡単ではありませんが、とても価値のある仕事です。

まとめ

今回の記事は、私が実際に出会った2つのエピソードを交えてお送りしました。

今は大喜びで取材に出る私ですが、取材に慣れるまでは怖くてたまりませんでした。最初のインタビューが決まったときは、緊張のあまり1週間前から挙動不審になっていたほどです。

そして今は、その時期を乗り越えられて本当に良かったと思っています。

もし、あなたが「取材をやりたいけれど、ハードルが高くて…」と迷っているなら、勇気を出して始めてみてはいかがでしょうか。取材ライターの仕事には、人間同士が向き合うからこその醍醐味があるのですから。

この記事を書いたライター

執筆者

さわきゆり

人見知りをまったくしないフリーライター。誰かの「必要」に応える記事を紡ぎます。読みやすいけれど印象に残る、芯の通った記事作りをモットーに活動中です。好きなものはバイクとサッカー観戦、嫌いなものは庭の雑草とオバケ(ただし霊感はま...

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