「いってらっしゃい」の語源を調べた理由
「いってらっしゃい」の語源を調べようと思ったキッカケは、とある日の母との会話です。以下に私と母の会話を再現しました。
私「そういえば、お母さんはいつも見送りだけは欠かさなかったね」
母「そうね、いってらっしゃいって言えば、皆無事に帰ってくる気がしてたなぁ」
私「なんで?」
母「よくわらないけど、おまじないみたいかものかな?」
私「ふぅ〜ん」
そこで会話は終了しましたが、私は「いってらっしゃい」の起源について気になりました。
かつて母に言われ、今は親として子どもたちに伝えている「いってらっしゃい」。
起源や込められた意味について、調べてみました。
「いってらっしゃい」の語源を調べて学んだこと
「いってらっしゃい」の語源を調べて学んだこととして、以下の3つをお伝えします。
- 「いってらっしゃい」の意味
- 「いってらっしゃい」が生まれた時代背景
- 言霊の観点から考える「いってらっしゃい」
豆知識を増やすつもりで、内容を確認してみてください。
「いってらっしゃい」の意味
「いってらっしゃい」は、「行って帰ってきてください」という意味があるという説があります。「行って、無事に帰ってらっしゃい」が短縮されて、「いってらっしゃい」となったと考えられています。
私は「いってきなさい」の丁寧語かと思っていましたが、どうやら違ったようです。見送る時点で帰りのことを考えているのは、気の早い話に感じるでしょう。
しかし「いってらっしゃい」が生まれた時代背景を考えると、言葉に込められた意味に納得します。
「いってらっしゃい」が生まれた時代背景
「いってらっしゃい」が生まれた時代には、以下のような説がありました。
- 明治時代「いってらっしゃい」の言葉が使われるようになった
- 江戸時代「行ってきなよと縁宜をいはふ」など「いってらっしゃい」の原型となる言葉が使われていた
- 江戸時代以前「いってらっしゃい」の語源がすでにあった
つまり江戸時代より以前に生まれた「いってらっしゃい」の語源が、時代を超えて受け継がれてきています。江戸時代の前といえば、安土桃山時代や室町時代、鎌倉時代です。
いずれの時代も、現代の日本よりもはるかに危険で、生き延びるのが非常に困難でした。さらにひとたび離れてしまうと、現代のようにスマホや電話で連絡することはできません。
昔の人は、大切な人を外に送り出すときにとても不安だったでしょう。そのため、「無事に帰ってきてね」の意味を込めた「いってらっしゃい」の語源となる言葉が生まれました。
そしてその想いは、言葉の形を変えて今も受け継がれているのです。
言霊の観点から考える「いってらっしゃい」
言霊の観点から考えると「いってらっしゃい」が引き継がれている理由に納得感が増します。日本では昔から、言霊という考え方があります。
言葉には霊力が込もっており、口から発した瞬間から不思議な力が宿るという考え方です。八百万の神という言葉がありますが、古来より日本では言霊にも神が宿ると考えられてきました。
つまり「いってらっしゃい」=「行って、帰ってらっしゃい」と言うことで、大切な人を守る力を込めていたのです。「いってらっしゃい」の言葉ひとつで、日本がいかに言葉に重きを置いていたかがわかります。
語源を学んで変わった「いってらっしゃい」への考え

語源を学んだことで変化した、私の「いってらっしゃい」への考え方について以下の3つをお伝えします。
- 自分の子ども時代について
- 「いってらっしゃい」を言う立場になった今
- これからの「いってらっしゃい」に込める願い
ぜひあなたも、自身の過去や未来の「いってらっしゃい」について考えてみてください。
自分の子ども時代について
「いってらっしゃい」を言うより、言われることの方が多かった子ども時代。
学校や習い事、遊びに行くときはよく母に「いってらっしゃい、気をつけて」と言われていました。
しかし子どものころは、何がそんなに危険なのかイマイチよくわかっていないものです。
「いつも通り学校行って、戻ってくるだけじゃん」
などと考えていました。しかし昔よりはるかに安全な時代になったとはいえ、事故や事件はいつ起きるかわかりません。
やはり子どもは、大人が見守るべき存在だなと改めて感じます。ふとすれ違う見知らぬ子どもにも「いってらっしゃい」と身を案じる人がいるのですから。
「いってらっしゃい」を言う立場になった今
時間が流れ、今は私が子どもに「いってらっしゃい」と伝えています。語源を調べたことでより一層、気持ちを込めて「いってらっしゃい」と伝えるようになりました。
子どもたちは「はいはーい」といった様子ですが、何でもない日常を改めて幸せだと感じています。これからも「いってらっしゃい」の習慣は続けていきたいです。
これからの「いってらっしゃい」に込める願い
これからも「いってらっしゃい」の言葉が日常であって欲しいです。少し話はズレますが、「いってらっしゃい」について調べていくうちに「いってきます」の語源も知りました。
「いってきます」は「行って、帰ってきます」です。つまり2つの言葉は、以下のような掛け合いになっています。
- 「いってらっしゃい」→「いってきます」
- 「行って、帰っていらっしゃい」→「行って、帰ってきます」
ところが戦国時代や戦時中、戦争に向かう人は「いってきます」とは言わず、以下の言葉を使いました。
- 行って参る
- いきます
命を賭して戦うと意志を固めるために、「帰る」という言葉は使わなかったようです。戦争で命を落としていた時代を考えると、今の平和のありがたみを感じます。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
このやりとりを違和感なくできる世の中であって欲しいと願わずにいられません。
「いってらっしゃい」が普通の世の中であって欲しい

「いってらっしゃい」の語源を調べ、命の危険を感じずに出かけられる平和な世の中はありがたいと、改めて感じました。時代が違えば、「いってらっしゃい」と言う度に今生の別れを覚悟していたことでしょう。
これからの時代も「いってらっしゃい」がありふれた普通の言葉であって欲しいと願います。
この記事を書いたライター

桜井はるか
3児を育てるママライターです。読者に寄り添った記事作成を目指しています。「転職」「就活」「育児」ジャンルが得意。趣味はイラスト作成・旅行・読書です。好奇心旺盛で気になったことは調べずにいられません。Webライターを通じてさまざまな...