なぜ、言い回しを工夫する必要があるのか

なぜ、言い回しを工夫する必要があるのか

そもそも、Webライターの中には「そこまでかしこまった敬語なんて必要ない」と考えている人もいると思います。実際、わたし自身が採用者側・ディレクターとしてライターと接していても、「です・ます」調以外の敬語はほとんど使わない方も多い印象です。

しかし、高単価案件の発注先のほとんどは企業です。そのため、Webライターとして順調にキャリアを積めば積むほど「企業の中の人」とのやり取りが求められるようになります。

Webライター側はフリーランス・副業という立場であっても、相手は「企業における業務の一環」としてライターとのコミュニケーションをしているわけですね。

先方がバリバリのビジネスモードで対応しているのに、こちらがカジュアルな対応をしてしまっては、相手から「この人、社会人として問題があるのでは…」と思われかねません。それに、我々Webライターは相手から「文章のプロ」だと信じてもらった上で仕事をするわけですから、言葉遣いの面で「え、この人はちょっと…」と思われてはいけないと思うのです。

何より、構成力や文章力とは無関係なところで相手からの評価を下げるのって、単純に損だと思いませんか?

というわけで、皆さんもぜひ、便利な言い回しの数々を学び、使いこなしてほしいと思います。

7つの場面別!クライアントワークの現場で今すぐ使える表現集

7つの場面別!クライアントワークの現場で今すぐ使える表現集

それでは早速、Webライターが遭遇しがちな、なおかつ自分の意見を伝える方法に困りがちな場面を7種類ほどチョイスしてみました。

それぞれ複数の例を紹介しておきますので、ご自身のキャラクターや、クライアントとの関係性に応じて使い分けてみてくださいね。

①依頼自体を断りたいとき

Webライターとしてある程度経験を積んでいくと、先方から依頼をいただく機会も増えていきます。大変ありがたい話ではあるものの、どうしても引き受けられない場面もあるでしょう。でも、相手との関係性を維持したいからこそ、断り方にも悩んでしまう…その気持ち、よくわかります。

そんなときは、以下のような表現を使ってみましょう。

【カドを立てずに依頼を断る表現の例】


  • 恐縮ではございますが、現在スケジュールの都合上お引き受けするのは難しい状況です
  • ご期待に添えず申し訳ないのですが、今回のご依頼についてはお力になれそうにありません
  • 誠に恐れ入りますが、今回の案件につきましてはお力添えできかねます

ちょっと堅苦しすぎるようであれば「申し訳ございません。現在スケジュール的にお引き受けするのが難しい状況ですm(*_ _)m」のように少し崩しても構いません。というかわたし自身も、実際の現場ではこれくらいのトーンでお返事することが多いです。

ポイントは「頼んでいただいたのにすみません」感を出すことですね。

「ぜひまたお声がけください」「◯月の上旬以降なら余裕ができる見込みです」のように、タイミングさえ合えばお仕事受けたいです!という感じをアピールしておくのも効果的でしょう。

②納期について相談したいとき

「クライアントワーカーたるもの、納期厳守は絶対!」というのはもちろん大切なことです。しかし、体調不良や家族絡みの急用、職場での急な欠員対応など、ライター側にもリアルの生活がある以上、納期に遅れが生じてしまう場合もあるでしょう。

あるいは、最初に案件の打診を受けた時点で「あ、このスケジュールはちょっときついな」と感じる場合も珍しくはありません。

そんなふうに、スケジュールについてクライアントに相談したい場面では、以下のような表現を使うとスムーズです。

【カドを立てずに納期の相談をする表現の例】

  • 納品スケジュールにつきまして、ご相談させていただけますでしょうか
  • 大変申し訳ないのですが、納期を◯月◯日に設定していただくことはできますでしょうか
  • 恐れ入りますが、納期につきまして延長をご検討いただきたく存じます


あ、この「~いただけますでしょうか」「~できますでしょうか」ってかなり便利なフレーズだと思っています。これらはそれぞれ「~ますか」「~できますか」の丁寧バージョンなんですよね。わたし自身、結構ありとあらゆる場面で活用している表現です。

③相手の意図を確認したいとき

Webライティングの仕事をする中で「あれ、これってどうするんだっけ…」と迷ってしまうのも、決して珍しいことではありません。

オンラインMTGで何か言及していた気がするのにメモしそびれたとか、先方が送ってきたリクエスト内容を正しく理解できているか不安になるとか…こういうモヤモヤを抱えた経験、ありますよね。

こういうモヤモヤは、一度クライアントに直接連絡する以外に解決のしようがないんです。以下のような表現で、サクッと確認してしまいましょう。

【カドを立てずに相手の意図を伺う表現の例】

  • 今回の件は◯◯という方向でご認識に相違ないでしょうか
  • 念のため伺いますが、◯◯については◯◯という解釈でお間違いないでしょうか
  • ◯◯様のお考えは◯◯と認識しておりますが、こちらでお間違いないでしょうか


実際のところ、この手の質問をされて不快になるクライアントはほとんどいないはずです。「私の案件について真剣に考えてくれているんだな」と好意的に解釈されるケースのほうが、圧倒的多数だと思います。

そもそも、相手のニーズに沿った成果物を作成するのがクライアントワークの真髄です。プロの仕事をするためにも、積極的に質問してみましょう。

④より詳しい情報を聞きたいとき

クライアントから仕様書などを受け取っても、その内容が漠然としていて対応に困ってしまう場面もありますよね。

そもそもクライアントは多くの場合、文章のプロではありません。ですから、すべての情報を一発で抜け漏れなく受け取れるなどという甘い期待はさっさと捨てて、こちらからどんどん意見を引き出しにいく姿勢が重要です。

【カドを立てずに詳細を聞き取る表現の例】

  • ◯◯について、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか
  • こちらの項目について、さらに詳細を教えていただけますと幸いです
  • 恐縮ですが、◯◯に関する資料が他にもございましたら共有をお願いしたく存じます


ライターとしての仕事をするにあたって、情報が少なくて困ることはあっても、多すぎて困るという事態はそうそうないと思います。必要だと感じる要素があればどんどん確認して、スムーズに仕事を進めましょう。

⑤仕事の内容について提案したいとき

よくSNSなどで「Webライターは言われた作業だけやっているようではダメ!意見があればどんどん提案しましょう」という意見を見かけます。わたし自身もその通りだと思っているので、割と思ったことはどんどんクライアントにお伝えするよう心掛けているタイプです。

しかし、「本当は◯◯のほうがいいと思ったんですが、言い出せなかったのでそのまま進めました」というライターさんも結構いるんですよね。ちょっと厳しいかもしれませんが、SNSやコミュニティでうじうじするくらいなら、はっきり伝えてしまえばいいのに…と、いつも思います。

【カドを立てずに自身の提案を伝える表現の例】

  • もし差し支えなければ、◯◯についてご提案してよろしいでしょうか
  • 現在Aとなっている部分につきまして、◯◯という観点からBのほうが効果的だと考えているのですが、いかがでしょうか
  • Aについては◯◯という理由から、Bのほうが適しているかと存じます


わたしは結構クライアントに対してずけずけ主張するほうですが、これはただ単に、やったほうがいいと思うことを率直にお伝えしているだけです。嫌がられたことはほとんどありませんし、それで眉をひそめるクライアントがいたら「相性が悪かった」と、そっと距離を置くだけの話です。

「わかっていたのに言わなかったら予想通り失敗した」なんて結果、見たくはありませんよね。良いアイデアが思いついた際には、ぜひ勇気を出して提案してみましょう。

⑥返信を急かしたいとき

Webライターは、その性質上クライアントとは別の場所で作業をすることの多い職業です。オフィスであれば口頭で「これってどうなっていましたっけ」と聞いて解決できる疑問でも、メールやチャットで問い合わせた場合、いつ返信が来るかわからずにドキドキすることになります。

普段レスが遅めなクライアントであれば、なおさら不安になりますよね。そんなときは、以下のような表現をそっと追加して、相手をつっついてみましょう。

【相手の返信をさりげなく急かす表現の例】

  • お忙しいところ恐縮ですが、本件につきましてご返信を頂戴できますと幸いです
  • 先日お送りした内容、ご覧いただけましたでしょうか。ご確認のほどよろしくお願いいたします
  • 差し迫っているなか恐縮ですが、〇時までにご回答いただけますと助かります

ポイントは「してもらえたら嬉しいな」感を漂わせることです。ここでうっかり「してください!」感を前面に押し出してしまうと、幼稚な印象を相手に与えてしまいます。

自分が気持ち良く仕事を進めるためには、相手にも気持ち良くなってもらうのが一番手っ取り早いんです。そのために、「一見丁寧に見えるけれど実ははっきり言う」コミュニケーションスキルを、ぜひ身につけていきましょう。

⑦「OKです!」と伝えたいとき

クライアントとのやり取りで地味に悩ましいのが「いいですよ」の表現です。言いたい場面は多いのに、きちんとして見える表現が思いつかなくて困った経験のある人も多いのではないでしょうか。

というわけで、この項目ではちょっと多めに例を紹介しますね。

【OKです!を丁寧に伝える表現の例】

  • かしこまりました
  • 承りました
  • 承知いたしました
  • 差し支えありません
  • 問題ございません
  • おっしゃる通りです
  • 左様でございます
  • 了解いたしました


わたし自身は「かしこまりました」「承りました」を使うことが多いのですが、これは「和語のほうがなんとなく柔らかくて女性っぽく見えるかな」と考えているためです。逆にかっちりした印象を与えたい場合は「承知いたしました」のように漢語を用いると良いでしょう。

同じ意味をもつ表現がたくさんあり、どれを使うかによって自分のキャラクターを演出できるのも日本語の面白いところです。いずれも正しい表現であることに間違いはないので、好みで選んで構わないと思いますよ。

言い回しのレパートリーを増やすには?3つのポイント

言い回しのレパートリーを増やすには? 3つのポイント

さて、いろいろと具体例を並べてきましたが、実際には他にも素敵な表現は存在すると思っています。文章のプロたるもの、幅広い表現を適切に使い分けていきたいですよね。

では、どうやって表現の幅を広げればいいのか。具体的な方法を3つ紹介します。

①「いいな」と思った表現をストックしておく

言い回しのレパートリーを増やすのに最も効果的なのは、実際に使っている場面を見て覚えることです。

Webライターの仕事をしていると、他の人と共同のチャットに入る場面も珍しくないと思います。実はわたし、結構他のライターさんの発言を興味深くチェックしています。中には、自分では使ったことのないようなかなり硬い表現を用いる人もいるので、そういう発言を見たらこっそりメモしていたりとか。

もちろんクライアントの表現で「いいな」と思ったものも、積極的に取り入れています。

例えば、わたしが「この人って論理的な文章を書くのが苦手そうだなぁ」と思っているライターさんについて、クライアントが「このライターさんは論理的な文章の組み立て方って部分については伸びしろがあって」と表現されているのを聞いたときには、目から鱗でした。

わたしは、塾講師という仕事を長く続けてきたせいか、他の人を評価する表現がきつくなりがちなのですよね。こういうソフトな表現についてはまだまだ勉強したいと思っています。

②日常生活でも意識してみる

ボキャブラリーを増やす機会は、日常生活の中にもたくさんあります。

例えば小学生に敬語を教えようとすると「えー、難しそう」とか「使ったことないよ」などと言われてしまうのですが、そこで「お店の店員さんの話し方とか、おうちの人がテレワークで電話しているときの話し方を真似してみよう」と促すだけで、スラスラ話せたりするんです。

大人のわたしたちであっても、無意識のうちに取り込んでいる言葉って、案外たくさんあるのではないでしょうか。そこをさらに意識的に覚えるようにしてるだけで、表現の幅がぐっと広がると思います。

日々を過ごす中で、ちょっとだけ「表現」に気を配りながら触れるよう心掛けてみてはいかがでしょうか。

③声に出して読んでみる

今からものすごく当たり前のことを言いますが、人間って使ったことない言葉はとっさに出てこないものなんです。

ですから、ここまで読んでくださっているライターの皆さんについても、今は「なるほどなぁ」と思っていても、いざというときには「えーと、何だっけ?」と困ってしまうだろうと予想しています。

言葉を定着させるには、声に出して耳からも取り入れるのが一番です。

「使ってみたいな」と思った表現があれば、ぜひ何度か繰り返し音読してみてください。

また、この記事を見ながらチャットを入力するような場面があったら(そんな光栄な機会があったら本当に嬉しいです…)打ち込んだ言葉も声に出して読んでみましょう。

まとめ|適切な表現を駆使して気持ちよく働ける関係性を築こう

今回は、クライアントワークで役に立つ表現について、場面別にご紹介してきました。

今ではこんなふうにさらさらっと使いこなしているように見えるわたしも、若い頃はぎくしゃくした硬い敬語しか使えず、顧客との関係を作るのに苦労していた人間です。

ある程度使えるようになったのは、塾講師というサービス業の世界に入って、先輩たちの言葉遣いを学んでから。「あ、その表現いいな」と思ったものを、どんどん取り入れてきたおかげで、現在クライアントに対してもかなりはっきり意見を伝えられています。

皆さまも、今回ご紹介した「適度にソフトな敬語表現」を駆使して、ぜひ快適なテキストコミュニケーションを楽しんでみてください!

この記事を書いたライター

執筆者

歌耶子

副業Webライター。本業は国語をこよなく愛する塾講師です。文章を読むのも書くのも好き過ぎて、ライターの世界に足を踏み入れました。休日は夫が引くほど長時間PCに張り付いて文章を打ち続けています。実はかなりのゲーマーで、個人では趣味のゲ...

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