1文字1円って結局高いの?安いの?

1文字1円って結局高いの?安いの?

そもそも、本記事のタイトルにある「1文字1円って時給いくら?」と聞かれて、あなたはすぐに答えられますか?

正解は、「状況に応じて変わるので一概には言えない」です。少し意地悪な答え方かもしれませんね。

とはいえ、あくまで目安として時給換算することは可能です。単純に「自分が1時間で書ける文字数 × 1円」で計算できます。

例えば、1時間に2,000文字書ける人なら時給は2,000円。書くスピードは個人のスキルやテーマによって異なりますが、一般的には1時間あたり2,000〜5,000文字程度と言われています。

気になる方は、実際に執筆にかかる時間を測りながら、複数の記事の平均を出してみると、自分の「ライティング時給」を割り出すことができるでしょう。

ただし、こうした単純計算で話が終わらないから、ライターの報酬の考え方は難しいのです。

仮に、執筆テーマがコラムや日記のように、自分のなかにある経験や感情を自由に書ける内容であれば、「1時間で書ける文字数 × 単価」で妥当な報酬が得られるかもしれません。けれど、「好きなことを書くだけ」で稼げる案件は、残念ながらほとんど存在しません

一般的なライティングの仕事は、ざっくり3つの種類に分類できます。

  • エッセイ・体験談型
  • リサーチ型
  • 高度な情報提供型


それぞれに求められる労力や作業の手間が異なるため、同じ「1文字1円」でも、感じる「割に合う・合わない」はまったく違ってきます。

<エッセイ・体験談型>

自分の体験や感想をベースに書くタイプで、比較的スムーズに執筆できるため、時給換算で見れば効率が良い場合もあります。ただし、需要が少なく、継続案件として依頼されることはあまりありません。

<リサーチ型>

指定テーマに沿って情報収集し、構成を整えて書く記事です。例えば、「ふるさと納税のやり方」や「投資の始め方」など。リサーチや構成作業に時間がかかり、2〜3,000文字でも4〜5時間かかることもあり、時給にすると意外と低くなることもあります。

<高度な情報提供型>

医療、法律、不動産、美容など専門性が高い分野では、正確な情報・専門用語・根拠のある記述が求められます。構成・語尾・文体なども細かく指定されるため、執筆に丸1日かかるケースも。1円単価でも、「実質時給500円以下だった…」と感じることも珍しくありません。

このように、ライティングの種類によって必要な工数や準備時間が大きく異なるため、「1文字1円=高い・安い」と単純に判断することはできません。大切なのは、「自分にとってその案件が割に合うか」を見極める目を持つことです。

単に、執筆にかかる時間だけ見積もるのではなく、リサーチの時間、修正や見直しにかかる時間など、納品にトータルでかかる時間を考慮した上で、割に合う案件かどうかを見極めましょう。

安請け案件ばかり選んでしまう心理と、そのリスク

安請け案件ばかり選んでしまう心理と、そのリスク

「報酬が安いとは思いつつも、つい受けてしまった」――そんな経験はありませんか?

特に駆け出しのライターにとっては、「実績を積みたい」「断ったら次がないかもしれない」という不安から、低単価の案件でも受けざるを得ないというケースも少なくありません。

しかし、安価での受注が常態化すると、知らず知らずのうちに自分の仕事に対する評価基準や交渉力が育たず、ライターを長く続けることが難しくなってしまう可能性もあります

ここでは、私の体験談も交えながら、なぜ人は安請け合いをしてしまうのか、そしてそこにどんな落とし穴があるのかを整理しながら、「持続可能なライター人生」を築くための考え方をお伝えします。

「数をこなす」時代を経て見えた、単価との向き合い方

実は私自身も、駆け出しの頃は「1文字1円」の案件を大量に抱え、1日に3〜4本の記事をとにかく書きまくる日々を送っていました。

「1文字1円」以下の案件もザラにあるので、まずはここが基準だろうと思ったのが理由です。また、高単価案件に比べて、ライターの審査が緩かったり、大量にライターを募集していたりするため、初心者の自分でも通りやすかったというのもありました。

早く実績を積みたくて、空いた時間はすべて執筆にあて、案件を片っ端からこなす日々。

そのおかげで、ライターとしての基礎スキルはしっかり身につきましたし、1本あたりの単価は低くても、本数を重ねたことで最終的な月収は決して悪い金額ではありませんでした。

ただ、当然ながら、その裏には相当な「代償」がありました。

毎日締切に追われるプレッシャー、睡眠時間は削られ、プライベートな時間もほとんどない。体力的にも精神的にも、いつまでこの働き方を続けられるのだろう…と感じることが日に日に増えるように。

そこで、少し貯金もできてきたときに、思い切って「低単価の案件を減らして、高単価に挑戦してみよう」と決めました。

新しいクライアントに応募したり、既存のクライアントに単価交渉をしてみたり。すると、想像以上にスムーズに話が通ったんです。

というのも、その頃には毎日記事を書き続けてきたことで、自分のスキルも鍛えられており、「この人なら信頼して任せられる」と思っていただけるだけの土台ができていたのだと思います。

今では、自分が納得できる単価・条件の案件だけを無理なく受けられるようになり、生活にも気持ちにも余裕ができました。ライターとして「続けられる働き方」とは何かを、自分の体験を通して実感しています。

ライターを長く続けたいなら「自分を安売りしないこと」もひとつの戦略

特にライターを始めたばかりの頃は、「まずは実績を作らなきゃ」「この案件を断ったら次がないかも」と思い、つい単価が低い案件でも引き受けてしまいがちです。

確かに、最初のステップとして経験を積むことは大切です。しかし、ずっと「安請け合い」を続けてしまうと、「自分の基準が低いまま固定されてしまう危険性」があります。

低単価案件を中心に受け続けていると、「時間をかけても報われない」「頑張っても生活が苦しい」と感じ、やがて疲弊します。ライティングは短期勝負ではなく、積み重ねがものを言う仕事です。

だからこそ、報酬と労力のバランスに無理がない範囲で継続するためにも、自分を安売りしすぎない姿勢が重要になります。

以前Mojiギルドにて、私が仕事選びの際に意識している軸についても書かせていただいたので、「安請け」が癖になってしまっている方は、こちらもぜひ参考にしてみてください。

「勉強代」と割り切るなら、出口を決めておこう

「勉強代」だからと、単価の低さを受け入れて案件を受けたことはありませんか?もちろん、新しいジャンルに挑戦する場合や、編集者とのやり取りを学ぶ機会と捉えるなら、それも有効です。

ただし、ずっと「勉強代」のままにしてしまうと、相場感が育たず、単価交渉のタイミングも見失いがち。そのため、「この案件は3本だけ受けてみよう」「この媒体で1ヶ月経験を積んだら次は別を探そう」など、「低単価案件を抜けるための出口戦略」をあらかじめ設定しておくことが大切です。

そうすれば、「安いけど勉強になるから受ける」ことも、マイナスではなく戦略的な選択になります。

「単価交渉=わがまま」じゃない!納得感のある報酬を得るために意識すべきポイント

「単価交渉=わがまま」じゃない!納得感のある報酬を得るために意識すべきポイント

クライアントとの単価交渉の際、「提示された金額よりも単価を上げてほしいなんて、わがままだと思われるのでは?」「相場に見合わない金額を提示して非常識だと思われたくない」と不安になる方も多いでしょう。

しかし、単価交渉は自分の仕事の価値を適正に伝える行為であり、決して「わがまま」ではありません

むしろ、報酬に見合ったパフォーマンスを発揮するために必要なコミュニケーションです。ここでは、納得できる条件で仕事を受けるために、単価交渉で意識すべきポイントを解説します。

交渉には根拠を添える

単に「単価を上げてほしい」と伝えるだけでは、依頼側にとって納得感が得られません。大切なのは「理由や根拠を明確に伝えること」です。

  • 事前リサーチに〇時間かかる案件であること
  • 他のクライアント案件では△円で執筆していること
  • 構成・入稿・SEO対応なども一括で請け負っていること


など、工数や付加価値の具体例を示すことで、適正な対価を主張しやすくなります。

また、報酬アップが難しい場合でも、作業範囲の調整や納期緩和など、条件面の見直しでバランスを取るという考え方もあります。

  • キーワード選定は先方にお願いする
  • 入稿作業は不要にしてもらう
  • 校正・修正回数に制限を設ける


など、労力を減らす代わりに単価据え置きという提案も有効です。交渉は「お金を上げる」ことだけでなく、「仕事の質と量のバランスを整える」ことでもあるということを念頭に置いておくと良いでしょう。

強気になりすぎず丁寧に提案する

交渉において、弱気になってしまうのが良くないのはもちろんですが、一方で「この単価じゃやりません」と一方的に突きつけるのも良くありません。

あくまで「対等なパートナーとして継続的な関係を築く」ことを意識しましょう。

例えば、提示された金額に納得できない場合、「本案件に対して、この単価では安すぎます」というように伝えるのではなく、「ご依頼いただいた作業内容と工数を踏まえると、もう少し報酬面のご相談ができれば幸いです」といった形で、柔らかく・前向きに伝えるだけでも、印象が大きく変わります。

単価交渉がうまくいかなかった場合はどうする?

単価交渉がうまくいかなかった場合はどうする?

交渉をしても、必ずしも希望が通るとは限りません。例えば「予算の都合で対応できない」「既定の単価なので変えられない」といった返答が返ってくることもあります。

しかし、交渉が成立しなかったからといって、「拒絶された」という意味ではありません。単に、今のその案件において条件が折り合わなかっただけの話です。たとえ単価交渉が不成立でも、丁寧なやり取りができていれば、今後の案件で再度声がかかることは十分にあり得ます。

ライターとクライアントの関係は「ご縁」の積み重ねです。交渉が不調に終わったとしても、感情的にならず、誠実にやり取りを終えることが、長期的な信頼につながります。「またご縁がありましたらよろしくお願いいたします」と一言添えておけば、印象を悪くすることはありません。

また、交渉がうまくいかなかったときは、それを一つの「ふりかえり材料」として活用することも大切です。

  • 自分の提示した金額や理由に説得力があったか
  • タイミングや伝え方に改善の余地はなかったか
  • 相手の事情(予算、業務内容)をどれだけ理解していたか


といった観点から自己分析してみることで、次回以降の交渉精度を高めることができます。

失敗は、成功のための経験値です。単価交渉が通らなかった経験を経ることで、案件の見極め力や、自分に合った条件を選ぶ目が養われていきます。

「今回の交渉は通らなかったけれど、自分の適正単価がはっきりした」——そう捉えることで、ひとつ先のステップへと進めるはずです。

単価が上がったときの変化と心構え

単価が上がったときの変化と心構え

単価交渉がうまくいき、これまでより高い報酬で依頼を受けられるようになると、多くのライターは嬉しさと同時に「ちゃんと成果を出さなきゃ」というプレッシャーを感じ始めます。

「この金額に見合うだけの価値を提供できるだろうか」と不安になるのは自然な感情ですが、必要以上に構えすぎると、かえって手が止まったり、納期が遅れたりしてしまうこともあります。

大切なのは、「単価が上がった=期待値が上がった」という事実を過度に恐れず、これまで通り、丁寧な仕事を積み重ねていくことです。

単価アップの背景には、過去の納品実績や対応力が評価されていることがほとんど。つまり、今のあなたのままでも十分に信頼されているということなのです。

また、単価が上がると、無理のない本数で生活が安定しやすくなり、仕事の質もさらに向上します。「安くたくさん書く」から「適正価格でしっかり書く」スタイルに変化することで、ライターとしての働き方や時間の使い方にも余裕が生まれてきます。

プレッシャーを力に変え、無理なく続けられるペースで書き続けること。それこそが、単価アップ後のライターに求められる最大の「心構え」と言えるでしょう。

まとめ|単価と向き合うことは、ライターとしての「軸」を持つこと

本記事では、「1文字1円」という一見わかりやすい単価設定の裏にある現実と、ライターとして報酬とどう向き合うべきかを解説してきました。

単価は、単なる数字の問題ではありません。そこには、時間・労力・知識・表現力といった「目には見えない自分の価値」が詰まっています。

つまり単価は、「あなたの時間・労力・信頼の対価」です。「この単価で、自分は本当に納得できるか?」という問いに、正直に向き合うことは、ライターとして自分の軸を持ち、長く書き続けるためにとても大切なことです。

最初は安い案件からのスタートでもかまいません。でも、書き続けるうちに「もう少し条件のいい仕事がしたい」と感じたとき、自分の言葉で交渉すること、自分の基準で選ぶことが、キャリアの転換点になります。

安請けが続いて苦しくなっている方も、単価交渉に踏み出せず悩んでいる方も、まずは「自分がどんなふうに働きたいか」を考えてみてください。納得感のある働き方を目指すために、この記事が少しでもヒントになれば幸いです。

この記事を書いたライター

執筆者

Haruka Matsunaga

おしゃべりが止まらない5か国語話者ライター。二次元にも三次元にも推しがとにかく多すぎるオタク。素敵なものや自分の好きなものをとにかくたくさんの人に広めたいという気持ちが執筆のモチベーションです。ペンは剣より強し、言葉の力を信じて...

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