意外と使ってしまいがちな表現:二重表現とは?

二重表現とは、同じ意味の言葉を重ねて使うことです。
「重ね言葉」や「重複表現」とも言い、話し言葉の場面でつい使ってしまう人も多いでしょう。
「まず初めに」や「はっきり断言する」などが典型例で、私も会話では無意識に使ってしまうことがあります。「びっくり仰天」のように、二重表現を強調のために意図的に使う場面もありますが、文章では読者に違和感を抱かれるリスクがあるため、使用を避けた方が無難です。
ここで難しいのは、二重表現の中には一般的に許容されているものもあり、すべてが不適切というわけではないことです。「旅行に行く」や「期待して待つ」なども実は二重表現ですが、読んでいて違和感を覚える人は少ないでしょう。
大事なのは「その言葉が必要か?」と意識することです。
二重表現を使った結果、冗長になると、読者の読みにくさにつながります。文章を書く際に、「なくても意味が通じるなら、削れるのでは?」と考えるようにしてみましょう。自分の表現を見直し、より伝わりやすい言葉を選ぶ意識が大切です。
よくある二重表現の例:「同じ漢字を使っているケース」

二重表現は、「同じ漢字を使っているケース」と「意味が被っているケース」に分けられます。まずは「同じ漢字を使っているケース」について紹介します。
「同じ漢字を使っているケース」の二重表現とは、一文の中に同じ意味を持つ漢字が重なってしまっているものを指します。会話では気にならない人が多いかもしれませんが、文章では同じ漢字を繰り返すため、違和感を覚えやすいです。
二重表現の中でも見た目でわかりやすく、見直し時に気づきやすい二重表現とも言えます。私がよく使ってしまいそうになる例を2つ紹介します。
後で後悔する
「後で後悔する」は、「後」という同じ漢字を使っている二重表現の代表例です。
「後悔」という言葉自体に、「後で」とか「後になって」というニュアンスが含まれているため、意味が重複してしまいます。
文章で書く際には、「後悔する」のみで十分です。私は、書き換え表現として「後で悔やむ」をよく使います。
被害を被る
「被害を被る」は、同じ漢字を使っている二重表現です。
これは「被」という漢字が重なっています。「被」という漢字自体が「こうむる」という訓読みを持つ漢字なので、「被害を被る」では「害をこうむることをこうむる」となってしまうのです。
そのため文章を書く際には、「被害を受ける」や「被害に遭う」といった表現を使うと良いでしょう。
よくある二重表現の例:「意味が被っているケース」

「意味が被っているケース」の二重表現とは、一文の中に同じ意味の言葉が複数回出てきてしまうものを指します。
このタイプの二重表現は、言葉の意味を理解していない場合に生じやすくなります。無意識のうちに使ってしまいがちなうえに、見直しでも気づきにくいため注意しましょう。
私がよく使ってしまいそうになる「意味が被っている二重表現」の例を、2つご紹介します。
製造メーカー
「製造メーカー」は、実は意味が被っている二重表現です。
「メーカー」という言葉自体が、もともと「製造業者」や「生産者」を意味します。このため、「製造メーカー」という表現は、同じ意味の言葉を重ねて使っていることになるのです。
以前の私も「製造メーカー」という言葉を無意識に使っていましたが、「メーカー」だけで意味が伝わることに気づいてからは意識的に使用を控えるようになりました。
過半数を超える
「過半数を超える」は、意味が被っている二重表現です。
「過半数」という言葉自体が「半数を超える」、あるいは「半数より多い」という意味を含んでいるため、「超える」と一緒に使う必要はないのです。
そのため私は「過半数を占める」や「半数を超える」などの表現を使っています。
よくある二重表現の例:「慣用化しているケース」

世間では、慣用化し、日常的に使われている二重表現も存在しています。私も長年使っていたものの、「これって二重表現だったのか!」と驚いた表現がいくつかあります。
文章を書く際に使用する場合、文脈に応じて、使用するかを選ぶことが大切です。また、レギュレーションや担当編集により判断が分かれるため、必要に応じて確認しましょう。
ここからは、慣用化した二重表現を2つ紹介します。
犯罪を犯す
推理小説やドキュメンタリーなどで使用される「犯罪を犯す」は二重表現です。
「犯罪」とは罪を犯すと言う意味であるため、「犯す」を重ねて使う必要はないのです。
「犯罪を犯す」は一般的に広く使われていますが、クライアントから使用を指定されない限りは避けた方が無難でしょう。
私自身、これまで指摘されたことはありませんが、万が一修正に迫られた場合は「犯罪に手を染める」や「罪を犯す」と書き換えられます。
事前予約
レストランや美容室への連絡などで使用される「事前予約」という表現は、実は二重表現です。
「予約」の「予」には「あらかじめ」という意味が含まれています。したがって「事前」と組み合わせてしまうと、同じ意味を繰り返していることになるのです。
「事前予約」という表現はすでに広く定着していますが、文章を書く際はクライアントから使用を指定されない限りは避けた方が良いでしょう。
私自身、修正に迫られたことはありませんが、万が一修正する場合は「予約」や「事前連絡」と書き換えられます。
二重表現が与える文章への悪影響

そもそも、なぜ二重表現は避けた方が良いのでしょうか?
それは、文章を分かりにくくし、読む人にストレスを与えるからです。
代表的な悪影響としては以下のような要素が挙げられます。
●【意味が伝わりにくい】
同じような言葉が続くことで、文章の中心部がわかりにくくなり、意味がぼやけてしまいます。
二重表現がある例: その問題については、「後ほど改めて再び 」説明します。
改善例: その問題については、「後ほど改めて」説明します。
例のように 「改めて」「再び」が重複すると、どちらの意味を強調したいのか不明瞭になります。
●【しつこく、冗長な印象を与える】
必要以上に言葉が繰り返されている印象になり、くどく、読みにくくなります。
二重表現がある例: これは「 最も一番重要」な ポイントです。
改善例:これは「 最も重要」な ポイントです。
例のように、「最も」と「一番」は同じ意味ですので、重複するとしつこく感じます。
●【見た目が良くない】
余計な言葉が増えると、文章全体がもたついて見え、スマートな印象を損ないます。
二重表現がある例:「これから先の、今後の 」方針を決める予定です。
改善例: 「今後の」 方針を決める予定です。
例のように、二重表現があると、文が間延びしてしまいます。
これらの理由から、ライティングではシンプルで正確な表現を心掛けることが重要です。
正しい表現を用いれば、文章の明瞭さが増し、読みやすさが向上します。ビジネスや仕事の場面でも評価につながるため、意識して二重表現を避けるようにしましょう。
ライティングで二重表現を回避するコツ

文章にさまざまな悪影響を与える二重表現ですが、回避するコツがいくつか存在します。
私が行っている方法は以下の4つです。
【(1)同じような意味の語が重なっていないか確認する】
「事前予約」や「過半数を超える」など、内容が重複する言葉が加わっていないか確認しましょう。
【(2)同じ漢字が近くにある場合は特に注意する】
例えば「馬から落馬する」のように、漢字が連続していないか気をつけることが大切です。
【(3)声に出して読み直す】
文章を書き終わった際には、目で見て確かめるだけでなく、声に出して読むことでリズムや違和感をチェックできます。スムーズに読めない部分は、二重表現である可能性があります。
【(4)ツールを活用する】
文章チェックツールを使うのも一つの方法です。ただし、すべての二重表現に対応しているわけではないので、最終的な判断は自分の目で行いましょう。
文章を洗練させるには、シンプルさが鍵です。少しの工夫で、より伝わる文章を目指しましょう!
まとめ
文章を書いていると、つい二重表現を使ってしまうことがあります。
しかし、不必要な二重表現は、読者の読みやすさを損なってしまいます。簡潔な表現にすることを意識するだけで、文章がぐっと引き締まります。最初は意識するのが大変ですが、慣れてくると自然とスッキリした表現を選べるようになるでしょう。
私自身もまだまだ勉強中ですが、これからもシンプルで伝わりやすい文章を目指していきたいです!
この記事を書いたライター

水木ゆう
フリーランスのWebライターです。自身でネットショップを運営していた際に、ブログを執筆したことでライティングに興味を持ちました。得意なジャンルは「歴史」「アニメ」「ゲーム」「観光」などです。また、ナレーターの勉強をしていた経験があ...