慣用句とは何か?基礎知識とその役割

慣用句とは何か?基礎知識とその役割

慣用句とは、2つ以上の単語が結びついたことで、それぞれの単語とは違う特定の意味合いになった言葉です。

「頭が痛い」「根も葉もない」などのように、文脈に依存し、文章の中で使われることで、正しく意味が伝わります。

例えば、「頭が痛い」という表現は、単独では「頭痛がする」という病気や体調不良の意味として理解されます。しかし、「問題が山積みで頭が痛い」と使われると、「問題に悩まされている様子」を表します。

同様に、「根も葉もない」は、普通に読むと「根っこも葉っぱもない植物の様子」を表します。しかし、「根も葉もない噂話に、振り回される」と使われると、「根拠がない、デタラメな話」という意味になります。

慣用句は「ことわざ」と混同されることが多いですが、厳密には違うものです。ことわざは「猫に小判」や「口は禍の元」など、単独で意味を成します。昔の人が残した知恵や心構え、教訓などを短く表しています。

一方の慣用句は、具体的な状況や心情を表現するために使われます。「猫の手も借りたい」「足が出る」など、教えや教訓ではなく、多くの場合比喩表現であることが特徴です。

ライティングにおいて慣用句を使うことは、文章に深みやリズムが加わり、読者の心に残りやすくなります。

例えば、「友達から指摘を受けて、耳が痛い」という文章で考えましょう。

「耳が痛い」という表現を使うことで、欠点を指摘されてつらいことを、印象深く伝えられます。これに対して、慣用句を使わずに「つらい」と書いた場合、そこに込められた感情や衝撃は伝わりにくくなるでしょう。

慣用句はその国の考え方や慣習、価値観を反映し、文章に豊かさをもたらします。慣用句を上手に使うことで、あなたの文章が読者に深く響くものになるでしょう。

代表的な慣用句とその由来

代表的な慣用句とその由来

ここからは、代表的な慣用句とその由来を紹介します。

今回紹介する慣用句は、それぞれ違うジャンルが由来となっています。由来を知ることで理解が深まり、誤用を防ぐことが可能です。

それぞれの慣用句がどのように生まれたのか、4つの代表的な例を探っていきましょう。

オブラートに包む

「オブラートに包む」とは、厳しい表現を避け、遠回しに和らげた言い方をするという意味です。

例えば、「敏感な話題なため、オブラートに包んで話した」のように、直接的な表現を避ける際に使います。

そのような「オブラートに包む」は、薬に由来しています。

「オブラート」とは、デンプン質にゼラチンを混ぜて作った半透明の薄い膜で、飲みにくい粉薬を包むために使用されるものです。苦味や刺激を和らげるためのものであることから、厳しい表現を和らげて伝えることを、「オブラートに包む」と言うようになりました。

そのため「オブラートに伝える」という使い方は、厳密には間違っています。

「オブラートに包む」という慣用句の由来を知ることで、表現の背後にある意味や比喩表現を理解し、より適切に使えるようになるでしょう。

羽目を外す

「羽目を外す」と言う慣用句は、「調子に乗って度を越した行動をしてしまう」という意味です。

例えば、「彼はパーティーで羽目を外して大騒ぎしていた」や「テストが終わった後、彼は羽目を外してゲーム三昧だった」などのように使います。

そのような「羽目を外す」という慣用句の由来は、馬に関連しています。

「羽目」とは、馬にかませる「馬銜(はみ)」という道具。馬銜は手綱とつながっており、騎手が馬を制御するために重要な役割を果たします。この馬銜を外すと、馬は自由に動き回り、騎手のコントロールを受けなくなります。ここから、「馬銜を外す」→「はめを外す」→「羽目を外す」という表現に変化しました。

このような由来のため、主に失敗した出来事に対して使うことが多い慣用句です。そのため「羽目を外して仕事をがんばった」といった使い方は、間違いに当たります。

馬銜が外れて暴れる馬を想像できれば、「羽目を外す」という表現の意味を理解しやすくなるでしょう。

※他に、「羽目板」から来ているという説もあります。

辻褄(つじつま)を合わせる

「辻褄を合わせる」とは、前後の矛盾がなく、筋道が通っていることを指す慣用句です。

「小説の結末で、ようやく話の辻褄が合った」や「彼はうまく話の辻褄を合わせて、嘘を隠した」などの使い方をします。

そのような「辻褄を合わせる」の由来は、着物から来ています。

「辻」は、交差点や縫い目が十文字に交わる部分を示し、「褄」は着物の裾が左右でぴったり合う部分を指します。このように、ぴったりと合うべき部分を合わせるという作業から、「辻褄を合わせる」という言葉が生まれたのです。

このように、着物における「辻」と「褄」の意味を知ることで、「辻褄を図る」や「辻褄をとる」などの誤用を防げます。

表現の深さを理解することで、言葉をより効果的に使えるようになるでしょう。

相槌(あいづち)を打つ

「相槌を打つ」とは、「相手の話に調子を合わせ、タイミング良くうなずいたり、返事したりすること」を指す慣用句です。

例えば、「彼は相手の話に相槌を打ちながら、興味を示していた」や「彼女は積極的に相槌を打って話を引き出した」などの使い方があります。

そのような「相槌を打つ」は、日本刀に由来します。

「相槌」とは、日本刀を作る際、2人の刀工が息を合わせて鋼を打つ作業のことです。ひとりが大槌で鋼を叩く際、もうひとりはそのリズムに合わせて小槌で打ちます。この精密な共同作業から、「適切なタイミングでうなずいたり、返事をしたりする」という意味の、「相槌を打つ」という慣用句が生まれました。

由来を知ることで、「相槌を入れる」といった誤用を防ぎ、正しく慣用句を使用できます。

ライターが慣用句を覚えるための具体的な方法

ライターが慣用句を覚えるための具体的な方法

慣用句を使いこなすことは、ライターにとって有益なスキルとなります。表現の幅が増え、豊かな文章が書けるようになるからです。

それでは、効率的に慣用句を覚えるためにはどのような方法があるのでしょうか?

詳しく見ていきます。

さまざまなメディアに触れる

慣用句を覚えるためには、多様なメディアに触れることが重要です。

新聞や書籍など多彩な媒体で、慣用句を使用した例を見ることで、言葉の意味や使い方を効果的に覚えられます。特定の分野に偏ると語彙が頭打ちになるため、さまざまなジャンルを選ぶことがポイントです。自分の好きなジャンルから始めれば、楽しく学ぶことができるでしょう。

多様な人と会話する

多様な人との会話も、慣用句を覚えるのに効果的です。

同年代や同業界の人に限定せず、世代や価値観の異なる人と交流することで、多様な語彙に触れることができます。新しい表現や言い回しに出会うチャンスが広がり、さまざまな慣用句に触れられるでしょう。

実際に使ってみる

慣用句をある程度覚えたら、ライティングで使用します。

実際に使うことで、慣用句の使い方を自身に定着させます。まずは日記やSNS、ブログなどで使ってみるのもひとつの方法です。新しく覚えた慣用句を意識して使い、仕事におけるライティングでも、使いこなせるようにしましょう。

まとめ

ここまで、慣用句について紹介しました。

慣用句は、正しく使うことで文章表現の幅が増え、ライティングにおける武器となります。正しく使うためには、慣用句の由来にも目を向け、把握することが大切です。

新聞や本で、気になる慣用句があれば、その由来について調べてはいかがでしょうか?

今後のライティングにおいて参考になり、より豊かでわかりやすい文章が書けるようになります。

この記事を書いたライター

執筆者

水木ゆう

フリーランスのWebライターです。自身でネットショップを運営していた際に、ブログを執筆したことでライティングに興味を持ちました。得意なジャンルは「歴史」「アニメ」「ゲーム」「観光」などです。また、ナレーターの勉強をしていた経験があ...

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