現代に残る「江戸言葉」

現代に残る「江戸言葉」

「俺ってほんとおっちょこちょいでさ!」「もう食べ終わったのかよ?せっかちだな〜」。

時代劇や歴史ドラマで聞いたことがある、この独特な言い回しは、江戸言葉と呼ばれる、江戸庶民の話し言葉です。

江戸言葉はテンポよく、まくしたてるように話すのが、粋な江戸っ子の証でした。歯切れよく勢いがあって、どこか人情味のある点が特徴です。

大河ドラマのタイトルにもなっている「べらぼう」も江戸言葉のひとつで、「常識的ではないこと」を指します。このような江戸言葉は、現代でも日常的に使われています。

ここからは、現代に残る江戸言葉をご紹介します。

相棒

「相棒」は、江戸時代に人を運ぶ乗り物である「駕籠(かご)」を支えるための棒を、二人一組で担いでいたことが由来です。

駕籠は「えっほ、えっほ」と二人の息がピッタリ合わないと、揺れてしまい乗客に不快感を与えてしまいます。このことから、相棒は信頼できる仕事上の一番のパートナーのことを指すようになりました。

相棒という言葉は、時代が下るにつれて仕事以外でも、信頼できる仲間や友人に対して使われるようになりました。ライティングでは、相棒という言葉を使うことで、協力関係の強さや絆を伝えることが可能です。

例えば「このプロジェクトでは、マーケティング担当者が私の『相棒』です」と書けば、信頼関係を表現できるでしょう。

マジ

江戸時代、芸人たちの楽屋言葉として使われていた「マジ」。当時は「真面目」の略語で、業界用語として定着しており、現代と同じような使われ方をしていたようです。

その後1980年代には、若者を中心に「マジ」が広まり、今では日常会話でもおなじみの言葉となりました。ライティングでは「マジ」を使うことで、読者に親近感を与え、リラックスした雰囲気を作り出すことができます。「今日のランチ、マジで美味しかった!」 のように、感情の強調に効果的です。

ヤバい

ヤバいの由来は、一説には江戸時代の「矢場」、ダーツのような遊び場にあるそうです。この「矢場」では、裏で売春をはじめとする違法行為が横行していたといわれています。

このことから、危ないものごとを「やばなこと」→「ヤバいこと」→「ヤバい」というようになったようです。

現代でも、基本的にはネガティブな意味合いで使われる「ヤバい」。一方で、すごいや嬉しいなどのポジティブな意味でも最近は使われています。

ライティングで「ヤバい」を使用するのは、基本的にカジュアルな文章でネガティブな場合に使うことが多いでしょう。しかし今後は、「ヤバい、超うれしい」のようにポジティブな場面でも使うことが増えるかもしれませんね。

現代に残る吉原で生まれた言葉

現代に残る吉原で生まれた言葉

江戸時代の遊郭、特に吉原で生まれた「遊里語(ゆうりご)」や「郭詞(くるわことば)」は、独特の言葉遣いが特徴です。「~ありんす」や「~しやんす」など、大河ドラマ「べらぼう」でも使われています。

このような独特な言葉遣いが生まれた背景には、遊女たちが全国各地から集められていたため、お国言葉(方言)がきつかったことに関係するようです。吉原言葉には隠語や洒落が多く含まれ、幕府の厳しい統制と江戸っ子の粋な気質が影響を与えていました。

そのような吉原で使われた言葉には、現代でも使われている言葉があります。ここからは、現代に残る吉原生まれの言葉を紹介します。

モテる

異性に好かれることを指す「モテる」。この言葉の由来は、一説には吉原にあるとされています。

遊女たちは複数の客を掛け持ちしていたため、客の一人一人に丁寧な対応は難しかったそうです。その中で、遊女から丁重にもてなされることがあると、客は「もてた」と自慢したそう。このことから、異性に好かれることを、「モテる」と言うようになったとされています。

カタカナを使う「モテる」が広まり始めたのは昭和中期以降。現代では異性だけでなく、動物相手や男女関係を越えて使われることも増え、「周囲から好かれる」ことを指します。

そのためライティングでは「モテる」を、恋愛関係のみならず、好感を集める人物や状況を描写する際に使えるでしょう。

なお、他の説では、「持てる」を由来とする説もあります。遊女たちから「もてはやされる」男性を、「持てる」と表現したとされています。

やり手

現代では仕事ができる人を指す「やり手」。この言葉も吉原をはじめとする遊郭が由来とされています。

「やり手」とは、遊女たちが働くお店(妓楼)にいる、年配の女性のことを指します。遊女たちのしつけや監督、客の品定めや値段交渉など、重要な仕事を任されていた役職です。多くは元遊女で、年配の女性が多いことから、「遣手ばばあ」とも呼ばれました。

「やり手」は、お店の経営に深く関わることから店主(楼主)に信頼されている人が任されていました。

時代が下るにつれ、「やり手」は大雑把に「仕事ができる人」という意味で使われるように変化したようです。

ライティングでは、仕事ができる人物や効率的に物事を進める人物を描写できます。「やり手」は由来から、周囲や上司からの信頼を得ていることも暗示するため、信頼感や人間的な魅力も含んだ表現としても活用できるでしょう。

御の字

御の字は、由来を遊郭に持つ言葉です。

もともと「御」は、相手に対して敬意を示す接頭語で、尊敬の気持ちを込めて使われる言葉です。この「御の字」は、遊女が顧客に対して感謝の気持ちを込めて、相手に「御」をつけたくなるほどの心情を表現するために使われていました。

時代が進むにつれて、遊郭以外の場でも「御の字」という言い回しが広まります。しかし、現代では異なる意味で使われる・認識されることが増えてきています。

本来は、「大いに有り難い」が御の字の意味です。しかし、現代では「一応、納得できる」という、誤った使われ方が増えています。文化庁の調査では、49.9%の人が「一応、納得できる」という意味で捉えており、ライティングにおいても使い方に注意が必要です。

参考:平成 30 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(12ページ)

まとめ

江戸時代に生まれた言葉は、今もなお、私たちの生活や会話に色濃く残っています。現代のWebライティングやSNS投稿にも強い影響を与えており、たとえば「ヤバい」や「マジ」などの言葉は、江戸言葉の時代から続く簡潔で強い表現力を引き継いでいます。

現代のライティングにおいて、「伝えやすさ」や「インパクト」は、読者に刺さるコンテンツを作るうえで欠かせない要素です。江戸言葉の「簡潔」で「インパクトのある」言葉は、現代ライターが求められる、限られた文字数で読者の心をつかむ力の助けとなるでしょう。

この記事を書いたライター

執筆者

水木ゆう

フリーランスのWebライターです。自身でネットショップを運営していた際に、ブログを執筆したことでライティングに興味を持ちました。得意なジャンルは「歴史」「アニメ」「ゲーム」「観光」などです。また、ナレーターの勉強をしていた経験があ...

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